ここ最近、
「今日は暑かったから、一日中エアコンをつけていた。」
「北海道も、もうエアコンなしでは暮らせないね。」
そんな話を聞くことが増えました。
確かに、十勝の夏も暑さを感じる日が増え、エアコンを設置する住宅も珍しくなくなりました。
エアコンを使うことが悪いとは、まったく思っていません。
設備も進化していますし、必要なときには上手に使えばいい。
ただ、住宅をつくる側として、最近少し考えることがあります。
「暑いから、エアコンをつけましょう。」
そこで終わってしまって、本当にいいのだろうか。
高性能住宅の、その先へ。
高断熱、高気密、省エネ。
住宅の性能は、とても大切です。
私たちもこれまで、十勝で住宅をつくるうえで、断熱や気密、暖房や換気について考え続けてきました。
ただ私たちにとって、それらはもう家づくりの「ゴール」ではありません。
心地よく暮らすための、大切な土台だと考えています。
だからこそ、その先を考えたい。
暑ければエアコンを使う。
寒ければ暖房を使う。
今は便利で性能の良い設備がたくさんあります。
でも、便利な設備があるからという理由で、住宅をつくる私たちまで「それでいい」と考えてしまったら。
もしかすると、そこで考えることをやめてしまっているのではないか。
住宅そのものの進化も、そこで止まってしまうのではないか。
そんなことを、最近よく考えます。
きっかけになった、ひとつの体験。
以前、札幌にある竹中工務店の北海道地区FMセンターを見学する機会がありました。
そのときに温熱環境についてのお話を聞き、実際にその空間を体感しました。

写真キャプション:竹中工務店 北海道地区FMセンター見学時
見学時の私の記憶では、室温の数字だけを見れば「涼しい」と感じるような温度ではありませんでした。
ところが、その空間にいても、不思議と私はそれほど暑さや不快感を感じませんでした。
そこで改めて意識するようになったのが、
「気温」
「湿度」
「気流」
です。
もちろん、人が感じる快適さはこの3つだけで決まるものではありません。
日射や周囲から受ける熱、人それぞれの感じ方など、さまざまな要素が関係します。
それでも、
「快適=室温を下げる」
という単純な話ではないのではないか。
気温だけを見るのではなく、湿度や空気の動きまで一緒に考えてみる。
住宅にも、まだまだできることがあるのではないか。
実際の空間を体感したことで、そんなことを考えるようになりました。
設備を使う前に、建築でできること。
例えば、夏。
窓から強い日差しが入り、室内が暑くなってからエアコンで冷やす。
もちろん、それでも室温は下げられます。
でも、その前にできることはないだろうか。

夏の強い日差しを、軒や庇で遮る。
太陽の向きを考えて、窓の位置や大きさを決める。
その土地では、どこから風が吹くのか。
入ってきた風を、家のどこへ抜いていくのか。
室内の湿度をどう整えるのか。
家の中の空気をどう動かすのか。
そして冬には、十勝の太陽の光や熱をどう取り込むのか。
一つひとつを見れば、決して新しい考え方ではありません。
むしろ昔から、住宅は自然とうまく付き合いながらつくられてきたはずです。
そこに今の断熱・気密性能や設備を組み合わせれば、まだできることがある。
私はそう思っています。
「設備を使わない家」をつくりたいわけではありません。
必要なときには、設備の力を借りればいい。
ただ、最初から設備だけを答えにしない。
まず建築としてできることを考えて、そのうえで必要な設備を組み合わせる。
その順番は、大切にしたいと思っています。
同じ十勝でも、同じ答えにはならない。
同じ十勝に建つ住宅でも、土地が変われば条件は変わります。
太陽の入り方も違う。
風の通り方も違う。
周囲に建っている建物も違う。
そして、そこで暮らすご家族も違います。

だから、
「この性能なら快適です。」
「この設備を付ければ快適です。」
それだけでは、本当は足りないのだと思います。
この土地で、このご家族が暮らすなら、どうするのがいいだろう。
朝はどこから光が入るのか。
夏の日差しをどう遮るのか。
風をどう取り込むのか。
冬の太陽をどう活かすのか。
そして、必要なときには設備をどう使うのか。
一棟一棟、答えが違っていい。
むしろ、違うのが自然なのだと思います。
考えることを、やめない。
高断熱、高気密、省エネ。
それらは、これからも大切です。
でも私たちは、その数字だけを追いかけるのではなく、その先にある「暮らし」を考えていきたい。
気温。
湿度。
気流。
太陽の光や熱、風。
そして、その土地で暮らすご家族。
それぞれを丁寧に見ながら、
「この家では、どうするのがいいだろう。」
と考え続ける。
便利なものが増えた今だからこそ、考えることをやめない。
それが、これから私たちが目指したい家づくりです。
